無愛想な先生
子どもたちが通う学校で役員を務めていると、時々職員室へ寄ることがある。
中学校。PTA委員会の用事が主である。ノックして戸を開けると教頭先生と教務主任の先生がいる。この先生たちはいつも丁寧なあいさつをしてくれる。
こちらから「お忙しいところすみません。失礼します」と教頭先生に一礼した後職員室の方を向いて「いつもお世話になってます」と先生たちに声をかける。
ほとんどの先生は笑顔であいさつをしてくれるが、いつも机に向かったままの先生がいる。
この先生、私が他の先生にあいさつをしながら近くに来てもそのまま。すぐ後ろにいて他の先生と話をしていてもそのまま。用を済ませて帰る時もそのままである。
よほど忙しいのだろうか。しかし他の先生も忙しいのにちゃんとあいさつはしてくれる。こちらも別にていねいな対応は求めていない。ただ私はこの学校の保護者で、時には仕事を抜けてくる時もある。
こちらもヒマだから遊びに来ているのではない。全くの無反応はとても居心地が悪くなる。この先生にしてみれば悪気はないかもしれないが「私は忙しいから」と心の声が聞こえてくるような気がする。
一度用もないが声をかけたことがある。するとやっとこちらを見てあいさつする。作り笑顔で。
これが民間会社の対応だったらどうだろう。客として訪れた会社であいさつもしない人がいたら、この会社の経営方針を疑ってしまう。あまり関わりたくなくなるだろう。
私も小中学校でPTA会長をはじめいろいろな役員を務めたので、先生の仕事の大変さはよくわかる。勤務時間中はなるべく用を済ませたら早く帰る。しかし近くにいるのに顔も合わせず無反応というのは、悪い意味での「昔ながらの公務員のお役所仕事」に見える。
今、先生たちは大変だ。不祥事があちこちで起こり、勤務校によっては経験のない部活動の顧問をして、慣れない指導でミスをしようものなら保護者からたちまち文句を言われる。
私はそんな先生たちを間近で見て、とても大変な仕事だなあといつも思う。私たちのように「品物」を作る仕事とは違って「人間」を育てる仕事なのだ。忙しい中、笑顔であいさつや対応をしてくれる先生には好感を持ってしまう。
私たちだって忙しいのだ。忙しいからとかの理由は通用しない。職員室に担当学年ではなくても保護者が来たならば、一言あいさつだけでも出来るはず。
小さなことから気をつけなければ、ますます保護者と先生の距離は遠くなっていく。先生という職業は、なくてはならないものだから、自分から気がついてほしいと思った。