駄菓子屋と三色トリノ
家の近くに「さくらや」という駄菓子屋があった。自分の記憶だと小学校に通う前からその店で買い物をしていた。
私の住んでいた町は、町内の子ども会ごとにソフトボールチームがあり、夏休みになると小学校でソフトボール大会があった。
大会が近づくと毎日ソフトボールの練習があり、練習が終わった後に「さくらや」に寄って駄菓子を食べた。
当時、駄菓子屋にテーブルゲームを置く店が多かった。ドンキーコングやパックマンが50円で遊べる。ゲームを1回やって30円のアイス「三色トリノ」とうまい棒2本を食べる。合計100円。
友だちと100円でとても楽しい時間が過ごせた。
さて、その店にはいつも優しいおじちゃんとおばちゃんがいた。私のことを「ターくん」と呼んでくれていた。
確か私が小学1年生くらいだったか。約40年前。日曜日の朝、駄菓子を買って家に戻ろうとした時、店から出ると大きな犬がいた。
首輪はなく、じっと座って私を見ていた。恐る恐る脇を通り過ぎようと歩いていくと、突然その犬が私をめがけて走ってきた。
怖くなり一目散にさくらやに逃げ込んだ。おばちゃんの後ろに回り込んだ。おばちゃんは笑いながら犬をなだめて追い払ってくれた。
おじちゃんも出てきて笑っていた。涙目の私に三色トリノをタダでくれた。犬がいないことを確認して家に帰った。
今思えばあの犬は私と遊ぼうと近寄って来たのだろう。しかし私より大きい犬は、ハッキリ言ってとても怖かった。
怖い思いをした後に家に帰った安心感で、三色トリノを食べた。とても美味しかった。
復刻版の三色トリノがあるらしいが、見つけたら久しぶりに食べてみたい。今いくらするのだろうか。30円では食べれないのだろうな。
さくらやはもう開いていない。店は当時のままだが戸は閉まったままだ。
しかし40年前のことだがよく覚えているものだ。