震災の時に役立った風呂の水
あの東日本大震災から8年が経った。早いものだ。
私は福島県福島市の東南の端っこに住んでいる。福島原発から70キロくらいの場所だ。
原発事故が起きた時は生きた心地がしなかった。避難地域が10キロ、30キロと広がるのが不安でたまらなかった。
地震で電気が止まり、水も出ない。携帯のワンセグでテレビを見ていたが、ここも避難勧告が出たらどうしようか?不安だった。
さまざまな情報がネットで流れたが、いざ自分が住んでいる地域がそうなった場合、国の情報に頼るしかない。正解かどうかはわからないが、一番安全な情報だ。
その後避難地域が広がることはなかったが、放射能は微量ながらここに降り注いだ。
数度にわたる除染作業によって、今は放射線量はかなり低い。日本の他の地域とあまり変わらない数字だ。
震災から8年を迎えた今日、あることを思い出した。
震災直後、水が出ないのは困った。コンビニやホームセンターに行けば飲料水は手に入ったが、問題はトイレだ。
風呂は我慢すればなんとかなるが、トイレを我慢することは大変だ。しかし水がない。水洗トイレに飲料水を使うのはもったいない。
そこで以前、非常時に風呂の残り湯をトイレに使うことを本で読んだことを思い出した。幸いにその時風呂には大量の残り湯があった。
水道がいつ復旧するかわからない。残り湯をトイレのタンクに入れた。そして1日3回くらい流すことにした。
少し汚い話だが、用を足したら水を流さず、朝昼晩の3回だけ水を流した。
また、食事の時は皿を使わずに紙製の皿で食事をした。水がないのに食器を洗うことは出来ない。どうしても汚れを落とす時は、また風呂の残り湯を少量使った。
そして3日後電気が復旧し、1週間後、ついに水道が復旧した。最初は赤茶色の水が出たが、しばらくするときれいな水になった。
放射能のこともあり、しばらくは水道水を飲み水としては使わなかったが、トイレや風呂が使えるようになった。水のありがたみが身にしみた。
あの後、風呂にはなるべく水をためておくようにした。風呂掃除は入浴する直前にしていた。また水が止まったら不便な思いをする。
避難所でもトイレが大変だったらしい。やはり十分な水がないので流せない。トイレ周辺は異様な臭いが漂っていたようだ。
風呂の残り湯は飲むことは出来ないが、非常時にはとても貴重な水となる。いざという時のために覚えていてよかったと思う。