あるPTA会長のアクシデント 第8話
※この記事は、私の身の回りに起きたことを元に作成しています。ある方より不愉快、武勇伝にしか思えないと意見がありました。人それぞれ受け取り方は異なりますが、いじめに対して必死に取り組んだ記事です。ご理解のある方のみお読みください。
PTA総会、開会
ほぼ全員参加の中で
ついに始まった。PTA会長として最後の日。そして平和な学校に起きた大問題を抱えてのPTA総会。
副会長の開会の言葉に続いて、PTA会長挨拶。保護者がズラリと並んで私を見る。何事もなければ、あがり症の私は「緊張するな〜」で済んだ挨拶である。
確かに緊張する。しかし普通の緊張とは何かが違う。得体の知れない緊張とも言おうか。保護者の方が、今何を思ってこの場にいるか。とにかく普通のPTA総会とは明らかに雰囲気が違う。
何事もなく進行する
挨拶の途中でガヤガヤと聞こえたらどうしようとか考えてしまう。保護者一人一人の視線が痛い。緊張する暇もない。何とか挨拶を終え、席に戻った。
続いて校長挨拶。ひそかにこの時が心配だった。学校での問題が発生すれば、たいがい保護者は責任は校長にあると考えるのではないだろうか?
PTA会長と校長。いじめ問題が起きれば、矛先はどちらに向かうと言われれば真っ先に校長だろう。
生徒数の少ない地方の小さな学校である。私も会長を1年務めた。さまざまな行事で保護者の方と交流があった。話したことがない保護者の方が少ないくらいだ。
そんなこともあり、この学校の保護者においては、PTA会長も大変なことに巻き込まれて大変だ、と思っているかと考える。都合のいい考え方かもしれない。PTA会長は、保護者と教師の会の会長であるが、保護者の代表という感じにとれるだろう。
逆に校長は学校の長だ。学校に問題が起きれば、責任は校長にあると考えるのが一般的だと思う。
校長が、日頃のPTA活動についての感謝の言葉を話している。この時に保護者の誰かが例の問題の説明を求めたりしないだろうか?
提起されたら、総会後に話します、と打ち合わせをしていたが、一度火がつけば連鎖反応で大騒ぎになるかもしれない不安があった。
一息つく
しかし何事もなく校長挨拶は終わった。フーッと息をついた。心の中で、大事な話は後でちゃんとするから、とりあえず総会を無事に乗り切らせてくれと願った。
役員の引き継ぎを終えて、総会は終了した。さて、ここからが正念場だ。
いよいよ始まる
校長が前に出て、今回の件について説明を始めた。保護者席を見ると、初めて聞いたと驚く様子は全くない。やはりみんな知っているようだ。
校長は「今回、残念ながら本校でいじめの問題が起きてしまいました。経緯を説明いたします」と話し出した。
靴と帽子がカッターらしきものでズタズタにされたことは、「私物にイタズラをされた」と表現をやわらげている。校長なりの配慮だろう。
校長の話を聞いている時、先程仕上げた原稿を確認した。果たしてこの原稿を読み上げるだけで、被害者の生徒と親の切ない気持ちが伝わるだろうか?ただの事情説明になってしまわないだろうか?
今ここにいる保護者たちに、何も伝わらなかったら何の意味もない。また同じことが繰り返される。どうにかして加害者の親へ気持ちを伝えたい。それよりも、加害者の親は自分の子どもがやったこととわかっているだろうか?いや多分わからないかもしれない。
まさに暗中模索だ。
覚悟を決めて
校長の話が終わった。校長が席に戻る。私は立ち上がった。用意しておいた原稿は、テーブルに置いてマイクに向かった。
原稿など必要ない。私の頭の中にある、被害者の生徒と親の今の気持ち、被害に遭った帽子と靴を見た時の親の気持ちを素直に話せばいい。
たとえしどろもどろに聞こえたとしても、絶対に何かは伝わるはずだ。そう思って私は話し出した。
続く